日本茶の製茶を行う工場2カ所に
「水つくり」が設置されています。
1カ所は静岡県掛川市の製茶工場で
約20年前から、
もう一か所は東京都狭山市で
約10年前からになります。
ここで「水」に求められるのは
蒸気力(じょうきりょく)です。
上質な煎茶は、1煎目、2煎目、3煎目と
味の変化を楽しめます。
私が20代の頃に戯曲を書くために
日本茶について調べることがありました。
その時に学んだのが
「1煎目のお茶は舌にもつれるように甘く、
2煎目は舌がしびれるように苦い、
それが日本茶の本当の味だ。
3煎目以降は何杯でも嫌味なく飲めるのが
本物です。」
という言葉です。
このうまみの変化を出すためには
「茶葉の蒸し上げ時間」が
とても重要な作業となるのです。
最近の日本茶は、
1煎目で味が全て出てしまう傾向があります。
これは茶葉が昔より硬くなり、
蒸し上げる水の質も落ちてしまった為、
蒸す時間を長くしなければならず、
深蒸し茶になっているからです。
蒸し上げが早い浅蒸しで
仕上げることができれば、
強い上質な煎茶が出来ます。
ある紹介で水つくりを知った
掛川の製茶工場のオーナーは
仕組みや取り付けの方法を説明すると
すぐに設置することを決めてくれました。
それまではいわゆる
よくある浄水器を使用していたそうなのですが
水つくりの水を使うと
茶葉への水分浸透力が早くなり、
昔ながらの浅蒸し茶が作れると喜んでおり、
いまも東京の有名デパートで
高級茶葉として売られています。
また、昔は蒸し上がった茶葉を
大きな竹ざるに広げて、
人々が素手で縒っていました。
熱いうちに作業をしなければならないので
縒り手の人達の手のひらは、
皮膚が熱くなっていたのです。
今ではこの作業は機械が行なっていますが、
機械で昔の手縒りのように作るには、
「蒸し加減が難しいのよ」
と狭山市のオーナーは言います。
水つくりの水の蒸気だと
蒸し加減の調整がうまくいくそうで
オーナーも満足気な顔をしていました。
いまも煎茶を求めて
工場へ直接買いに来る人が絶えないそうです。
様々な職人たちと水つくりのお話を
紹介してきましたが
いかがでしたでしょうか。
私自身、彼らから話を聞くたびに
「そんなことがあるのか!」と
驚くことばかりでした。
水つくりが技術ある職人たちの
クオリティをあげるサポートができていることが
とても嬉しく、
水つくりの力を実際に証明してくれる姿に
まだまだやれることは沢山あるなぁと
元気をもらうのです。