私はこれまで水を通して
様々な現場を見てきましが、
同時に土と水の関係やその技術について、
国内外の様々な文献も調べてきました。
今回はその中で特に印象に残った文章を、
木津龍馬さんの優しい声での朗読を通して
ご紹介したいと思います。
これは、
今のロシアがソヴィエト連邦であった時代に、
子ども向けに書かれた
「水読本」(みずどくほん)に掲載された
文章です。
実はソ連時代のロシアでは
水と土の研究がとても盛んで
世界の最先端にあったと言われています。
ソ連の正式な国名は
「ロシア社会主義連邦ソヴィエト共和国」です。
1917年のレーニンの指導によるロシア革命で
建国、
1991年にゴルバチョフ大統領による
連邦議会の解散宣言崩壊して、
今のロシア共和国になっています。
建国した頃の国家の産業の基礎は
農業にありましたので、
コルホーズという共同農場を全国に組織して
農業生産の向上に
国を挙げて取り組んでいました。
科学もそれをバックアップするために、
農業生産を支える土壌と水の研究が進みました。
そして、ソ連科学アカデミーから発表される
マーリア・ミハイロヴィチ・コノノワ博士の
論文は世界中の国で翻訳されて、
今も土壌研究の基本文献になっています。
そんな国で、子どもたちに
この地球上での水の在り方と重要さを
伝えようとしたのが
これから朗読でご紹介頂く詩文です。
ぜひ、まだ何も知らない子どもになった気持ちで
お聞きください。
「日暮れ時の空の美しさ、
陽が昇る時の、
天空の神々しく深く微妙な色合い。
これらは大気中の水蒸気が
太陽の光を吸収したり反射したりしたものです。
一つ一つ違った形をしている山々。
あるものは高く険しく、
あるものは深くなだらかに、、、
そして、さまざまな森、林、溪谷、滝、小川、
平野と大河、、、
これらもすべて水が造り出したものなのです。
北極や南極の氷、大陸の氷河、雲、雪、霧、雨・・・すべて、水。
この地表の70%を占める海。
その海水の重さと圧力が、
地盤を押し上げて山脈を造った。
さらに、ほとんど無数ともいえる生物、
生物のいるところには、必ず水があります。
むしろ、水の無いところには
生物は存在しません。
数限りない化合物の中の、
酸化水素という単純な構造を持った「水」は
地球の中で別格の地位を占めているのです。」
いかがでしたでしょうか。
自然と水の関係の奥深さを、
詩的な文章を通してイメージを広げてくれる
素晴らしい文章だと思います。
何より、この文章が子どもたちに向けて書かれた
という事実は、
当時のソ連の教育水準の高さを
物語っているとも感じます。
こうした先人の知恵をしっかりと受け継いで
次の世代に伝えていくことは、
今この時代を生きる私たちの大切な役目だと
思っています。