「水つくり」開発ストーリー
水物語その36 ベトナムでの事例②
翌日。
通訳兼ドライバーのバイクへ大量の機材を乗せ、
昨日回った農家へ向かいました。
まず最初にやることは
水つくりリアクターの設置です。
彼らが畑に使っているのは水道水ですが、
日本のように蛇口をひねれば勢いよく出てくる
水道はありません。
ベトナムがまだフランスの植民地だった時代に
作られた公共の水道は
長いことメンテナンスされていないため
水道管のあちこちから漏れがあり
末端である蛇口からは
ちょろちょろとしか出てきません。
この水を屋根の上に作った水槽へ1日かけて
溜め、畑へと撒くのです。
ベトナムの水はミネラル分が多い硬水であり、
もちろん蛇口からの水は飲めません。
この水質を改善するため、
私は屋根の上の水槽に水つくりリアクターを
吊るすことにしました。
正式にはブロワでエアーレーションをして
水の循環をさせたほうが効果は早いのですが
その電気代を払う余裕はありませんので
吊るすだけです。
朝からこの作業を繰り返し、
3軒目を吊るす頃には午後1時を過ぎました。
作業も終わり、
下へ降りると農家の人たちはみんな、
家の中に入ったまま出て来ません。
どうしたのかと通訳に尋ねると、
1時から4時までは暑いので
家の中で昼寝するのが習慣とのこと。
私も大きな麦わら帽子を被っていましたが、
言われてみれば確かに頭がクラクラしていたので休憩をしその日は終わりました。
三日目。
再びバイクで向かい、水を調べてみると
明らかに良い方へ変化していました。
農家の人々も「いつもの水と違う」
「いっぱい飲んだ」といい反応でした。
「この水を撒くと土が柔らかくなり、
良い堆肥もできる」
ということを3軒の農家に説明し、
午前の部を終えました。
午後には全員を集めて今後の進め方について
話をするつもりでしたが
驚いたことに、彼らは堆肥について
まったく知らなかったのです。
原料になる動物の糞尿についても
「汚い」という感覚しか無いようでした。
彼らの中の一人にブロイラー用の雛を育てて
売っていてそのフンを集めているというので、
堆肥作りにはそのフンを使うことにし、
そこに混ぜるもみ殻の処理を教えました。
もみ殻の表面にはパラフィンが
自然コーテイングされているので
それを破るため、石で叩いてから混ぜます。
私も立ち会いながら、
その場ではじめての堆肥を共につくり
鶏小屋の脇に積みました。
毎日、発酵状態の観察と
発酵温度が下がってきたら
水を足して混ぜ返すように伝え、
後の二軒には、
水つくりの水を出来るだけ
畑に撒くようにと伝えました。